インタビュー
誰もが使いやすいものを、日本でも当たり前につくりたい! アクセシビリティ向上支援チームtra11y(トレイリー)誕生秘話

🌼はじめに🌼
カラビナでは、今年の5月に、社内有志のアクセシビリティ向上支援チームtra11y(トレイリー)が誕生しました。
今回は、このチームを牽引するmistyさん、mintさん、litaさんにお話を伺いました。
普段はテント事業部に所属し、ディレクター・デザイナー・エンジニアとして活躍する3人が、どのようにこのチームを立ち上げたのか?その経緯や想いをお届けします!
🌼チーム立ち上げのきっかけ🌼
--なぜ、アクセシビリティ向上支援チームを立ち上げたのか?教えてください!
misty: 立ち上げた感覚はなくて(笑)「アクセシビリティをやりたい!」と言い続けていたら、チームができた感じです。
強いて言えば、2023年にアクセシビリティカンファレンス福岡の運営に関わったことがキッカケ。
元々、アクセシビリティに興味があったけど、世の中的にもニーズが高まってきて、ウェブ制作と相性いいんじゃない?って確信が出てきて。
その頃にカンファレンスの運営に携わったことで、自分でも、何かもっと能動的にやりたいなと思って。手始めに、会社のSlackで「アクセシビリティの輪読会をしませんか?」と呼びかけてみたら何人か参加してくれて、今に至ります。
継続的に開催される輪読会は誰もが気軽に参加できる雰囲気。学びはnotionにまとめられ、社内共有されていきます🙌
--mintさんはどういったキッカケでアクセシビリティに興味を持ったんですか?
mint: 私は、2021年ごろにGoogle UX Certificateを受講して勉強する中で、アクセシビリティを知って、「全ての人が当たり前に使えるサイトっていいな」と思うようになっていたんです。
それからイギリスに住んでみたら、そこで出会ったサイトやアプリは「いろんな人が使えること」が当たり前のデザインが多くて感動しました。
イギリスは、様々な人権に対する厳しい法律があったり、移民も多いので、作る側はいろんな人が当たり前に使えるサイトを作らなければいけないみたいで。
この経験から、私も「全ての人が当たり前に使えるサイト」を作っていけるデザイナーになりたいと思うようになりました。
よく聞く「誰ひとり取り残さない」社会を目指す背景に、“障害の社会モデル”って考え方があって。障害は個人の能力の問題ではなく、社会の仕組みが排除してしまっている構造の問題と捉えることなんですけど。
だからこそ、デザイナーやエンジニアが考えるべきは、アクセシビリティなのかなって。
lita: 昔はものが見えづらいと、農作業をはじめとする社会への参加が難しい場面もありました。
今はメガネやコンタクトが普及して、そこはだいぶ変わりましたよね。同じ発想で、まだ無いサービスや仕組みを整えていくことで、もっと誰もが使いやすい社会に近づけると思います。
–litaさんは?
lita: 言葉は知っていたんですが、デザイニング・ウェブインターフェースの本を読んだあたりから、もっと気になり始めた感じです。
そんな中、母が病の後遺症で車椅子ユーザーとなり、障害当事者の家族として、アクセシビリティが自分ごとになっていって。
障害当事者とつながる機会も増えていた時に、あるコミュニティで、視覚障害の方がウェブサービスを利用する時に困っていたので、サポートしたことがあって。
当時、自分はエンジニアの仕事をしていて、便利にするはずのものを使えない誰かがいることに衝撃を受け、サービスの開発側として何かできないだろうか...と考えるようになりました。
だけど、自分ひとりじゃ何も出来ないな、もっと、アクセシビリティに関わる仕事がしたいなっていう想いが頭の片隅にあった時に、GAADに登壇してたmistyさんの話を聞いて、カラビナにキャリアチェンジしてしまいました(笑)
misty: 責任重大じゃないか(笑)
一同: さすが、委員長。いや、代表理事!
※2025年9月現在、misyさんはアクセシビリティカンファレンス福岡の実行委員長であり、一般社団法人アクセシビリティカンファレンス福岡の代表理事でもあります
misty: 照れるからやめて(笑)チームができた今、社内だけでなく、社会を少しでも変えていけたら、という気持ちです。
※mistyさんのGAAD Japan 2024登壇アーカイブ動画はこちらから視聴できます
🌼アクセシビリティとは何か?🌼
--三者三様の素敵な想いが、皆さんを出会わせたんですね!みなさんが考えるアクセシビリティって、一体どういうものでしょうか?
misty: 「誰か」のためでなく、「すべての人」のためであることかな。
”アクセシビリティ”って言葉を聞くと、障害のある方のためってイメージを抱く人も多いかと思うんです。 だけど、カラビナでは「誰か」のためではなく「すべての人」にとっての“使いやすさ”を目指したい。
mint: 特別なことじゃなくて、誰にとっても優しい設計なんだよね。
たとえば、視力が弱い方にとって、文字サイズが調整できるUIは助かると思う。だけど、それって高齢者とか、屋外でスマホを見る人にもメリットがあったりするし。
misty: 例えば、カラビナでは、コーポレートサイトやサービスサイトの改善にも、アクセシビリティの視点を取り入れています。
ブログのカテゴリ構成やUIのバグ修正など、日々の小さな改善が、結果的に誰かの“見やすさ”や“使いやすさ”につながっているんです。
🌼クライアント支援で大切にしていること🌼
–-近々、アクセシビリティ支援のサービスがリリースされると聞きましたが、クライアントを支援する上で心掛けていることってありますか?
☝️10月に公開予定のサービス「tra11y」のイメージを少しだけご紹介!
misty: クライアントと伴走することですかね。
受身で要望を聞くのではなく、納品して終わりでもなく、能動的に一緒に取り組みたいと考えています。
-–初めてアクセシビリティに取り組む人・企業に伝えたいことはありますか?
lita: アクセシビリティって、“完璧”である必要はないと思っていて。
misty・mint: そうそう!
misty: いきなり100点を目指すんじゃなくて、毎日プラス1点を重ねて継続していく感じだよね。
lita: 大切なのは、少しずつでも良くしていこうという姿勢だと感じているので、ちょっとした気づきとか、小さな想いから始めていくのがいいんじゃないかなと思います。
mint: キッカケはどうであれ、自分に関係することが多いテーマだと思うので、些細な気づきを相談してもらえたら、一緒に考えていきたいなって思います。
misty: このチームは始まったばかりだけど、ここにいるメンバーは皆、アクセシビリティを“自分ごと”として捉えて、真摯に取り組んでいます。
わたしたちの仕事は、“本当に必要な仕組みをつくること”と考えているので、“誰かのためだけじゃなく自分のためにもアクセシビリティに取り組みたい”と思う仲間に出会えたらと嬉しいです。
🌼チームtra11y(トレイリー)の名前の由来🌼
tra11yは、「trail(小道・足跡・道筋)」と「a11y(Accessibilityの略)」を掛け合わせたものです。
登山では“つながり”が大切ですが、そこに必要なのは「誰もが歩ける道」です。
tra11yは、Web上の情報アクセスや操作の導線を整え、アクセシビリティという“みんなが歩ける道”を設計します。小さな段差や見えない壁=「使いづらさ」を取り除き、誰もが迷わず情報やサービスを利用できる環境を整えることを使命としています。
私たちは、アクセシビリティを通じてすべての人に“つながる道”を提供し、誰もが暮らしやすい社会の実現を目指します。
追記:サービスサイト「tra11y」
🌼関連リンク🌼
mistyさんのGAAD Japan 2024登壇アーカイブ動画
mintさんのアクセシビリティカンファレンス2024参加レポート
mistyさんのアクセシビリティカンファレンス福岡2025実行委員長インタビュー