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アクセシビリティカンファレンス福岡2024に行ってきました!

ミント

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デザイナー

アクセシビリティカンファレンス福岡2024のロゴ

先日、福岡で開催された「アクセシビリティカンファレンス福岡」に参加してきました!

2024年11月30日土曜日に福岡の警固神社社務所ビルで行われたこのカンファレンスでは、Webやアプリのアクセシビリティ向上に関心のある人たちが集まり、さまざまな視点からのセッションが展開されました。会場はほぼ満員。 参加者の熱量がとにかくすごかったです。!ほぼ満席のカンファレンス会場の写真 弊社カラビナテクノロジーもブロンズスポンサーのためデザインチーム(Jasminさん、ugiさんデザインありがとうございます!)でパネルを作成!

mistyさんと私でカラビナテクノロジーはどんなアクセシビリティーを目指していこう?と考えて 「当たり前にどんな人でもwebが利用できるような環境を作る」 「みんながみんなのままで、同じ情報やサービスを受けられることを実現する」 という思いをキャッチコピーに盛り込みました。 カンファレンスで展示するパネルを持っている写真。「ありのままで、世界とつながれるように」と書いてある。 ジャジャーン!前日に出来上がったパネル

点字シールが貼られたパネルの写真。点字の印刷は全てひらがなで入力しないといけないのと、印刷されてから貼るまで天地無用なので緊張した。

カンファレンスにて、様々な企業のパネルと並ぶカラビナのパネルの写真当日もちゃんと展示されていました!

そして、弊社のmistyさんがカンファレンス実行委員として大大大活躍! カンファレンス前から当日、さらには休憩中もずっと忙しく動き回っていて、本当に…お疲れさまでした!

さらに、カンファレンス終了時の挨拶では、なんとmistyさんが次期カンファレンス委員長に就任することが発表されました! これを受けて、**私たちカラビナテクノロジーも、もっとアクセシビリティ強化に取り組んでいかなければ…!**と強く感じました。

カンファレンスの概要・テーマ

今回のカンファレンステーマは 『つぎはどうする』 でした。

前回のカンファレンスから一年経ち、多くの人がアクセシビリティに向き合い、取り組みを始めてきました。では、次のステップは? 「もっと価値を生み出すには?」「どうやって結果を出す?」といった問いを考え、前へ進むことを目的としたテーマでした。

カンファレンスは、手話通訳やライブ字幕(UDトーク)、託児所の完備など、アクセシビリティに配慮された素晴らしい会場でした。

体験コーナー

体験コーナーでは休憩時に実際にスクリーンリーダーで読み上げを行ってみたり、視覚障害の見え方を体験できるメガネがあったりで、セッションの間の休憩時間は大賑わいでした。おかしスポンサーの皆さんが提供してくださるクッキーやコーヒーを片手にアクセシビリティについて知識を深められる場、最高ですね! 体験コーナーの様子。各企業のブースが設置してある写真。

視覚障害者の視界を体験できるコーナーで女性が実際にメガネをかけて資料を読んで見ている写真白内障・中心視力障害・視覚狭窄症の方の見え方を体験できる。どんなフォントが見えやすいかを比較できる。

PC-Talker Neoシリーズを体験する人の写真視覚障害者(全盲)の方はタブキーで移動+読み上げで対応するが、ロービジョン(弱視)の方はマウス+読み上げで対応するとのこと。

セッションについて

まず最初は、「障害は世界を捉え直す視点」をテーマに活動されているキュレーター・プロデューサーの田中みゆきさんのセッションでした。このセッションでは、障害やアクセシビリティの捉え方そのものを根本から問い直すようなお話があり、背筋が伸びる思いでした。 セッション中の田中みゆきさんの写真 「アクセシビリティは単なる配慮ではなく、人権の問題です。」という田中さんのまっすぐな言葉に、思わず「そうだそうだ!」と深く頷きました。

アクセシビリティを実現する方法の一つとして、マニュアル化があります。しかし、それが目的化してしまうと、「マニュアルを守ること」自体がゴールになってしまう。本来、アクセシビリティの取り組みは、それ自体が目的ではなく、実際に「必要とする人々」の生活や社会参加につながるものであるべきです。そのため、提供する側が満足するだけの取り組みになっていないか、常に振り返る必要があると感じました。

単にアクセシビリティを整えるだけでは、障害のある人が社会に公平に参加できるとは言えず、提供する側の自己満足に終わってしまうこともあるのだと反省。また、「エイブリズム」(健常者を基準とし、障害者を「不足している存在」として捉えること)や、「テクノエイブリズム」(テクノロジーの発展がアクセシビリティを向上させる一方で、健常者の価値観を押し付ける方向に進むこと)についての問題提起もありました。

セッション1つ目から、「アクセシビリティ福岡2024」のテーマである「次はどうする?」を深く考えさせられる時間となりました。エイブリズムに抗うためには。1.マジョリティーが「健常者の特権」について意識的になること。2.障害のある人がつくる側に立つための技術をアクセシブルにすること。製作側/開発側に障害のある人が加わること。今、つくるための技術を持っているのは障害のない人に偏っている。しかし、障害のある人が発信側に立つために、つくるアクセシビリティを開発していくことで、より「公平な」社会が実現されていくのではないか。


2つ目のセッションは、SmartHRの坂巻舞羽さんによる「アクセシビリティをあたりまえにするまで」でした。 セッション中の坂巻舞羽さんの写真 SmartHRでアクセシビリティを当たり前にするための取り組みについて、詳しくお話しいただきました!

まず、SmartHRのデザインシステムには、アクセシビリティに関する情報(品質をチェックするためのチェックリストや、適切な代替テキストの書き方など)が含まれており、開発者が情報を確認する際に、自然とアクセシビリティにも意識が向くような仕組みが作られています。また、自社で使用するUIコンポーネント集そのものも、アクセシビリティの高い状態を維持できるよう、継続的に向上・改善に取り組んでいるとのことでした。

特に素晴らしいと感じたのは、品質管理のフローに「アクセシビリティテスター」(障害当事者がアクセシビリティの品質を検証する役割)が組み込まれていることでした。健常者の視点だけでプロダクトを作らないよう、徹底されているのが印象的でした。 アクセシビリティテスター、障害当事者によるユーザーテスト・試験の実施。1.障害当事者がアクセシビリティ品質を検証するアクセシビリティテスタープロジェクトを2022年より始動。2.視覚障害や上肢障害のあるメンバーによるアクセシビリティチェックやユーザビリティテストを実施可能3.アクセシビリティチェックの常時実施に加え、リリース前のチェックについて開発チームにも呼びかけ ここまでアクセシビリティに取り組んでいるSmartHRさんですが、障害者を雇用している企業からは「うちの従業員は、こういったアクセシビリティ対応があっても使えないと思います」といったフィードバックを受けることもあるそうです。坂巻さんの「基礎的な取り組みやWCAGを実践するだけでは、誰もが使える状況にはまだまだ遠い」という言葉が、とても印象に残りました。


3つ目のセッションは、NHKエンタープライズの小谷野崇司さんによる「手話CG KIKIが繰り広げるインクルーシブ社会の実現」でした。ウェブ上のテキストをなめらかな手話動画に変換できるデジタルヒューマンの開発についての発表でした。 セッション中の小谷野崇司さんの写真 2025年6月に施行される欧州アクセシビリティ法では、サービス提供者に対し、すべてのユーザーが利用できるようにアクセシビリティ対応を求めています。

  • 通信:リアルタイムテキスト・音声・ビデオ通信のサポート
  • 視聴覚:字幕・音声解説・手話通訳の提供
  • 交通:リアルタイム情報やサポートをアクセシブルな形式で提供

と定められており、今後、世界的に手話通訳のニーズがさらに高まることが予想されます。

特に印象的だったのは、健常者の視点では「聴覚障害のある人には字幕があれば十分では?」と考えてしまいがちですが、実際には、ろう者の中でも「字幕で理解しやすい人」と「手話の方が理解しやすい人」がいること。そして、日本語の理解度にも個人差があるため、字幕だけでなく手話も提供されることが重要だという点でした。

私自身、健常者的な視点しか持っていなかったことを反省しました。健常者が「音声」や「文字」のどちらからでも情報を得られ、理解しやすい方を選択できるように、ろう者も同じように選択肢があるべきだと改めて考えさせられました。 聴覚障害者への情報保障について。「字幕」だけでは不十分な理由とは?  「日本語」と「日本手話」は異なる言語で文法も違う 日本手話を第一言語とする人もいる 「字幕」を理解できない人もいる 日本手話話者にとっての日本語字幕は、日本語話者が外国語テロップを読む感覚に近い。外国語を流暢に理解できる人もいれば、翻訳に時間がかかる人、ほぼ理解できない人もいる。同様に、日本手話話者の日本語理解度も様々。そのため、情報保障には手話(日本手話話者向け)と字幕(日本語話者向け)の両方が必要なのです。


4つ目のセッションは、アルファサード株式会社 創業者・技術担当取締役の野田純生さんによる「選挙のアクセシビリティ」でした。最後のセッションということもあり、時間がかなり押していたため駆け足のセッションとなりましたが、大変興味深い内容でした。 セッション中の野田純生さんの写真 選挙の仕組み自体がそもそもアクセシブルではないこと、選挙公約のウェブサイトが選挙終了後すぐに削除されるため検証が不可能であること、さらには選挙報道にもアクセシビリティ上の問題が多く存在することなど、さまざまな課題が指摘されました。

また、選挙公約のPDFについても、候補者によって読み上げのしやすさにばらつきがあり、実際にスクリーンリーダーで読み上げを確認したところ、きちんと正しく読み上げられるものはわずか6%という衝撃の結果でした。

ユーモアを交えたセッションでしたが、「選挙に関する情報をきちんと受け取り、投票する」という基本的な権利が、アクセシビリティの不備によって阻まれている現状を知り、これは早急に解決すべき問題だと強く感じました。 小選挙区候補者のPDF調査結果。タグつき、読み上げ、順序指定ありPDFの割合は対応なしが94%、対応ありが6%でした。小選挙区立候補者の選挙公報200人分を対象に調査。対応はわずか12名。内訳は自民(9人)公明(1名)立憲民主(2名)でした。 流石に少なすぎる!


参加して感じたこと

「アクセシビリティカンファレンス福岡」に参加し、アクセシビリティが単なる配慮ではなく、人権の問題であることを改めて実感しました。特に、アクセシビリティの取り組みが「必要とする人々」の生活や社会参加に直結するという点に強く共感しました。

体験コーナーでは、視覚や聴覚障害の体験を通じて他者の視点を学び、情報提供の多様性がいかに重要かを感じました。また、選挙のアクセシビリティ問題にも触れ、早急に解決すべき課題だと強く感じました。

今後も最新の情報をキャッチアップしながら、私たちのプロジェクトにもアクセシビリティの視点を積極的に取り入れていきたいと思います。

そして、カラビナメンバーのmistyさんが来年からカンファレンス委員長に就任するということで、会社としても、今後さらにカンファレンスを盛り上げていきたいと考えています! カラビナメンバーのmistyさんの写真

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