Shopifyを活用したチケット販売システム開発で、映画館運営のDXを推進
株式会社KBC UNIE
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株式会社KBC UNIEは、福岡県を拠点とする総合プロモーション会社で、イベントプロデュースや広告代理業務、映画館運営など多岐にわたる事業を展開しています。 同社から、映画館事業に関して、「属人化している業務を効率化し、注力できていない顧客への販促を強化したい」という要望を受け、コンペの末、カラビナを選んでいただきました。最終的に、Shopifyを活用し、映画館「KBCシネマ1・2」向けのチケット販売・発券、上映スケジュール管理、会員管理、CRM機能を備えたシステム・アプリ「ファンシアター」を開発しました。
業務効率化とCRM強化を実現するシステムの開発へ
システム開発にあたり、同社からは、映画館の運営業務全体の効率化と、会員向けのサービス向上を目的とした独自システムをフルスクラッチで開発してほしい、さらに、将来的に、同業他社にも横展開できるシステムにしてほしい、という要望をいただきました。
現場調査を始めると、同社は既にチケット予約の機能を備えた別システムを使用しており、現場で働くスタッフはスピーディに運営作業をこなすなど、課題は少ないように思われました。
しかし、映画館の運営業務全体を洗い出していただいた資料を元にヒアリングを行うと、来場者数を手書きでメモしてまとめていたり、業務に必要なチェックリストをすべて手書きで作成したりするなど、属人的でミスが起きやすい非効率な運用を行っている部分もありました。
これらの調査結果を踏まえて、既存システムで抱えていた課題の解決を図りつつ、目的にかなうシステムを効率よくどうつくっていくかを検討しました。最終的に同社も重視されていたコストやセキュリティ面を考慮し、ShopifyとShopifyのカスタマイズアプリをベースに開発することを提案しました。 そこで開発されたのが、映画館の運営業務の効率化と、会員向けのサービス向上、既存システムの制約を超えたCRM機能を兼ね備えた顧客を大切にするためのシステム・アプリ「ファンシアター」です。
ユビキタス言語を作成し、具体的な要件定義と設計に活用
要件定義にあたり、まず、業務フロー全体の整理を行いました。これにより、チケット販売の窓口業務など有人対応が求められる作業や、手書きの売り上げデータを関係者にFAX送付する作業など、システム化によって業務効率を高められそうなプロセスを明らかにしていきました。
次に、業界特有の用語やプロセスを理解するため、ユビキタス言語を作成しました。映画業界には「着券」「興行収入」「DCP」などの専門用語が多く、さらに社内での独自定義も存在しました。ユビキタス言語を作成することで、開発側の業務理解も進み、関係者間の認識齟齬を防ぎながら、要件定義を正確に進めることができました。
業務フロー全体の可視化や認識合わせが進んだ後は、映画の上映前後の業務プロセスをタイミングや役割ごとに分解し、既存システムで対応できる部分と対応できない部分を明確にしました。これにより、既存システムで対応できていた機能はもちろん、足りない機能を洗い出し、具体的な要件定義と設計に進む基盤を構築しました。

映画館の運営業務に最適化されたシステム・アプリ開発で顧客体験の向上へ
最終的に、以下の機能を備えたシステム・アプリを開発することができました。
- キオスク(セミセルフレジ)の導入:従来、有人対応だったチケット販売プロセスをキオスク型端末でセミセルフに変更し、対応時間を削減
- 直感的なスケジュール管理システム:Googleカレンダーのようなユーザーインターフェースを採用し、上映スケジュールの調整を効率化
- 売上分析の自動化:手動で行われていた売上データ集計をシステムで自動化によってスタッフの業務負担を軽減
- 売上報告の自動化:映画配給会社などへの売上報告をFAXからメールの自動送信に移行し、スタッフの業務負担を軽減
- CRMの強化:有料会員のサブスクリプションにより会員向けのリワード機能での利用促進や、自社の顧客情報を活用したLINEやメールでのコミュニケーションを実現
同社の運営する「KBCシネマ1・2」には、2024年9月から「ファンシアター」を導入し、下記の成果もご共有いただきました。
業務効率化その1:日報、週報の報告(月30時間削減)
各お取引先への日報報告はこれまで従業員が手書きやExcelに打ち込み、メールやFAXで個別に報告していました。ファンシアターの導入で、日報報告は自動送信で済むようになり、業務時間を月30時間削減できました。
ただ業務時間を削減できただけでなく、集計の間違いや誤送信といったヒューマンエラーによるミスもなくなったことで、お取引先さまとの信頼関係構築にもつながっていると感じています。
業務効率化その2:上映スケジュールの登録作業 (月12時間削減)
これまでHP用、チケット販売システム用、映写作業用など複数のシステムに同じ情報を入力する重複作業が多く発生していました。 新しいシステムでは情報が一元化されたことで重複作業がなくなり、映画館でとくに大切で間違いが許されない上映スケジュールの登録業務を正確かつ短時間で進められるようになりました。
その結果、毎週の上映スケジュールを1日早く劇場公式ホームページにてお知らせすることができるようになり、お客さまの利便性も向上しました。
業務効率化その3:セミセルフレジによる接客時間削減(月150時間削減)
当館でシステムと一緒に導入したセミセルフレジは、お支払い以外のチケット購入操作をお客さまにしていただくことができます。従来のスタッフが座席を押さえ、支払い方法を聞くといったチケット購入に関わる接客時間を大幅に削減することができ、より少人数での運営をすることができるようになりました。
1日5~6人のスタッフが必要でしたが、3~4人で安全にお客さまをお迎えすることができるようになりました。無人券売機と違い、お客さまとの接点を残すことで、お客さまとスタッフとの会話の機会は引き続き生まれており、ミニシアターの良さも残すことができているのではないかなと思っています。 また、座席もお客さまご自身でお選びいただくことで、聞き間違いなどによる座席番号の間違いなどもなくなり、お客さまが希望された通りのお席のチケットを発券することができるようになったのも大きな成果だと感じています。
さらに、オンラインでご購入いただいたお客さまはチケット発券の直前まで、ご自身で座席変更ができるようになりました。お客さまがより便利で快適に映画をお楽しみいただけるようになり、劇場でも喜びのお声を多数いただいております。
そして、導入から約4ヶ月にもかかわらず顧客データを25000件近く取得できており、システム移行後にセグメント配信したメールの開封率は平均65.7%、クリック率は平均6.6%、配信したメールからのチケット予約獲得率は平均33.3%といった高い成果につながっています。


お客様の声
当社がRFPを作成し、8社さまにお声がけしご提案依頼をさせていただきました。御社以外は全てゼロから開発する提案をいただきました。その中でShopifyを活用したご提案は非常にユニークで目を引く内容でした。決済や顧客情報の管理にShopifyを利用することで開発費用も抑えられること、既存のShopifyの様々なアプリを利用できることなど当社の想像を超えたご提案内容に魅力を感じ、ぜひともお願いしたいと思いました。 またミニシアターになくてはならないITツールを開発したいという強い思いにも共感いただき、長期的に見ても良いビジネスパートナーになっていただけると感じたこともご依頼した理由の一つです。
開発を進める中で、当社の声に親身に耳を傾けてくださり、様々なご提案をいただきました。Shopifyを利用することでの制限もあり、開発は困難を極めたものと思われますが結果、映画館に必要なITツールを開発してくださったと考えております。 特にセキュリティ面、顧客関係管理(CRM)機能、お客さまの購入画面の見やすさ、分かりやすさはどこの映画館にも負けないとても素晴らしいものだと思っています。
利用していく中で様々な課題も見えてきたので、より良いものにしていけるように、今後も一緒に取り組みを進めていけたらと思っております。
株式会社KBC UNIE ご担当者様より
クレジット
クライアント
株式会社KBC UNIE株式会社KBC UNIEは、1964年に設立された福岡県福岡市に拠点を置く会社です。事業内容は幅広く、イベントの総合プロデュース、広告代理業務、音声コンテンツ制作、映画館の運営、人材派遣などを行っています。特に、イベントの企画・制作・運営や、テレビ・ラジオ・デジタルメディアを利用した広告展開に強みがあり、地域と人々に寄り添う企業を目指しています。
制作メンバー
ディレクション:misty エンジニア:kuro、nda、nomin、103 デザイナー:kanu、jyoti